「奈良はお金持ちが多い」と言われています。
この話は本当です。
なぜ奈良はお金持ちが多いのか、どんな部分からお金持ちが多いと分かるのか、データや歴史的背景と絡めながら解説していきます。
また奈良県民の世帯年収や、平均貯蓄額もご紹介。
「我が家の年収や収入はどの程度の水準なのか知りたい」という人は、ぜひ参考にしてください。
奈良の大豪邸が建ち並ぶ高級住宅街もご紹介しています。
奈良はお金持ちが多い!平均貯蓄額や年収をチェック
奈良市の貯蓄額は全国1位
総務省統計局が実施している家計調査によると、奈良市民の貯蓄額は、全国の県庁所在地の中でも上位です。
順位は年によって変動しますが、2018年・2017年には、全国の県庁所在地の中で貯蓄額1位を獲得しています。
では具体的にいくら貯蓄しているのか?というと、おおむね2000万円~2700万円ほどです。
総務省の家計調査方向で2019年のデータを確認すると、奈良市で暮らしている2人以上の世帯は、平均で2,128万円貯蓄しているという結果でした。
年によって差はありますが、東京23区や横浜市といった、日本のお金持ちが集中している都市と比較しても遜色ありません。
貯蓄額が低い傾向の東北北部や沖縄、九州の一部地域と比較すると、約2倍もの金額を蓄えています。
またこの統計は現金だけではなく、有価証券や生命保険などの保有資産も含めたものです。
奈良市民は現金以外にも、バランスよくさまざまな資産を保有していると分かっています。
奈良県全体で見ても貯蓄額が多い
奈良市民だけではなく、奈良県全体で見てもお金持ちが多いです。
総務省統計局が発表した2021年の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」によると、2人以上の世帯を対象に平均貯蓄額を調査したところ、以下のような結果になりました。
47都道府県の平均貯蓄額(2021年)
1位 | 東京都 | 2372万円 |
2位 | 京都府 | 2210万円 |
3位 | 奈良県 | 2023万円 |
4位 | 岐阜県 | 1943万円 |
5位 | 千葉県 | 1913万円 |
6位 | 滋賀県 | 1909万円 |
7位 | 愛知県 | 1815万円 |
8位 | 埼玉県 | 1758万円 |
9位 | 群馬県 | 1682万円 |
10位 | 神奈川県 | 1642万円 |
この統計によると、奈良県は全国で3番目に貯蓄額が多いです。
給与水準の高い東京都が1位なのは、なんとなく納得できますよね。
しかし東京への通勤者が多い千葉や埼玉より、奈良県は順位が上なのです。
奈良県民は年収も高い
さらに奈良県民は、年収も高いと分かっています。
総務省の同資料から、2人以上の世帯を対象とした平均年収を確認してみると、奈良県は全国6位です。
47都道府県の平均世帯年収(2021年)
1位 | 東京都 | 978万円 |
2位 | 埼玉県 | 937万円 |
3位 | 神奈川県 | 837万円 |
4位 | 岐阜県 | 801万円 |
5位 | 愛知県 | 801万円 |
6位 | 奈良県 | 799万円 |
7位 | 福岡県 | 795万円 |
8位 | 千葉県 | 795万円 |
9位 | 石川県 | 794万円 |
10位 | 群馬県 | 793万円 |
奈良県の平均世帯年収は全国6位ですが、4位の岐阜県、5位の愛知県と僅差です。
結果は年によって変わるため一概には言えませんが、奈良県民は関東の埼玉県民や神奈川県民より年収こそやや低いものの、蓄えは上回っていると分かります。
奈良は「耐久消費財」の保有率が高い
貯蓄や年収以外のデータも見てみましょう。
総務省統計局の「全国消費実態調査」によると、奈良は次のような耐久消費財の保有率が高いです。
- ピアノ
- ビデオレコーダー
- 空気清浄機
- デスクトップパソコン
- タンス
- 学習机 など
このような耐久消費財は、「狭小住宅に住んでいる」「生活に余裕がない」などの理由があると、所持したくても難しいですよね。
少数の富裕層だけが貯蓄・年収などの平均数値を上げているというより、比較的多くの人々が、一定水準以上の生活を実現しているといえるでしょう。
「剪定ゴミ」が多いのもお金持ちならでは
「奈良は剪定ゴミが多い」と言われています。
剪定ゴミとは、庭木を手入れする際に出る枝葉のことです。
お金持ちの豪邸の庭で、松の木や生け垣が立派に刈り揃えられているのを見た記憶がある方も多いでしょう。
このことから、奈良はそれなりの広い庭を有する一戸建てが多く、また庭木の手入れをする生活の余裕もあると考えられています。
お金持ちが多い奈良県の教育事情
ではお金持ちだと言われる奈良の人々は、稼いだお金を何に使っているのでしょうか?
そのひとつは教育費です。
奈良市は収入における教育費の割合が高い
総務省の「家計調査年報(家計収支編)2019年」によると、奈良市の勤労者世帯が1ヶ月に使っている教育費は、平均2万7,813円です。
全国の県庁所在地の中で、3番目に教育費を多く支払っていると分かりました。
また実収入における教育費の割合も、3位(4.71%)です。
関西は、子供の教育にお金をかける傾向があるといわれています。
奈良も例外ではありません。
奈良県は私立中学に通う子供の割合が高い
文部科学省が発表した、私立中学に通う子供の割合データを見てみると、奈良県は4位です。
私立中学に通う子供の割合が高い都道府県(令和2年度)
1位 | 東京都 | 25.20% |
2位 | 高知県 | 17.87% |
3位 | 京都府 | 13.39% |
4位 | 奈良県 | 12.49% |
5位 | 神奈川県 | 11.04% |
6位 | 広島県 | 9.98% |
7位 | 大阪府 | 9.76% |
8位 | 和歌山県 | 9.45% |
9位 | 兵庫県 | 8.64% |
10位 | 宮城県 | 6.62% |
関西エリアの都道府県が5つもランキングに入っていますね。
奈良県は、関西の中で2番目に私立中学へ通う子供の割合が高いです。
東大寺学園や西大和学園など、京都大学への進学者が多い名門高校が揃っているという事情も関係しているでしょう。
※小数点第3位を四捨五入しています。
豪邸がずらり!奈良県のお金持ちが住んでいる高級住宅街は?
お金持ちがたくさん住んでいるといわれる、奈良県の高級住宅街を紹介します。
- 学園前(百楽園)エリア
- 菖蒲池エリア
学園前(百楽園)
お金持ちが多く住んでいる奈良県屈指の高級住宅街として有名なのが、学園前駅の北側に広がる「百楽園エリア」。
富雄駅方面にかけて広がっています。
学園前駅は大阪や近鉄奈良駅へのアクセスが非常に優秀で、急行・快速急行だけでなく、特急も停車します。
さらに飲食店や、買い物スポットも豊富です。
カラオケやゲームセンター、パチンコ屋などの娯楽施設はほとんどありませんが、静かに落ち着いて暮らしながら利便性も確保できる子育てしやすい環境です。
学園前(百楽園)エリアの歴史
学園前は1926年頃から開発がおこなわれました。
それまでは日本一古いダム湖の「蛙股池」があるだけで、ほとんど何もない場所だったのです。
しかし菖蒲池駅や近鉄あやめ池遊園地がオープンし、関西屈指の行楽地としてたくさんの人が訪れるように。
高級住宅街として発展したのは、帝塚山学園の開校がきっかけです。
1941年に帝塚山学園が開校したことで、学園前駅が作られました。
駅の周りを中心に、開発が進んでいきます。
戦後には当時の近畿日本鉄道で会長を務めていた佐伯市が、学園前に自宅を建てました。
高級住宅街として知られるようになったのは、この頃からでしょう。
菖蒲池
近鉄菖蒲池駅の近辺も、高級住宅地として知られています。
特に近鉄菖蒲池駅の北側にある「菖蒲池(あやめいけ)」と、さらにその南側にある「蛙股池(かえるまたいけ)」の一帯を指して、「菖蒲池エリア」と呼ばれることが多いです。
学園前と違って急行や快速急行は停車しません。
しかし菖蒲池を中心に、公園や遊歩道などが整備されていて、自然環境に恵まれています。
駅周辺には病院や教育施設スーパーなどが揃っており、利便性とのどかさを兼ね備えた、暮らしやすいエリアです。
ちなみに菖蒲池駅周辺でも、駅の北東側の狭い道や急傾斜が続く場所は、比較的不動産価格が安くなっています。
菖蒲池エリアの歴史
菖蒲池エリアは元々、山林が広がるのどかな場所でした。
発展を始めたきっかけは、現在の近畿日本鉄道によって菖蒲池駅が作られたことです。
アクセスしやすくなった菖蒲池を訪れる人が増え、さらに1926年には、あやめ池遊園地が作られます。
現在の「近鉄あやめ池住宅地」は、2004年に閉園したあやめ池遊園地の跡地に作られたものです。
奈良にお金持ちが多い理由
なぜ奈良にはお金持ちが多いのでしょうか?
理由を探っていきましょう。
大阪のベッドタウンとして発展してきた
昭和の中頃以降、奈良市や奈良県北西部のあちこちで、大規模な住宅開発がおこなわれました。
大阪へ通勤者する人々の多くが奈良に自宅を構え、ベッドダウンとして発展してきた歴史があります。
百楽園や登美ヶ丘のような高級住宅街の整備も進み、この頃に「大阪で稼ぎ、奈良で暮らす」という図式が完成したといえるでしょう。
奈良に住んでいる人々の貯蓄額が多いのは、日本の景気がよかった時代に大阪で稼いでいた世帯の資産額が、少なからず反映されていると考えられています。
それなりに豊かな家庭が堅実に暮らしている
奈良は東京と比べると、驚くようなお金持ちが大勢住んでいるわけではありません。
しかし今までご紹介してきた通り、「それなりに広い家に住み、それなりに豊かに暮らしている」ような世帯は多いです。
堅実に相応の暮らしをしている家庭の多さが、貯蓄額の多さに繋がっていると推測できます。
同じ奈良県民でもさまざまな方がいるので、一概に「倹約精神がある県民性」と片付けるのは少し乱暴かもしれません。
しかし奈良県民の裕福さが「気づかれにくい」ものであることからも、タワーマンションに住んで派手な暮らしを送るようなイメージとは異なっていると分かるでしょう。
お金持ちが多いのになぜ?奈良の県経済は弱い
ご紹介してきた通り、奈良は大阪のベッドタウンとして発展した歴史があります。
大阪に通勤して一定の資産を築き上げた世帯が多いいっぽうで、実は県経済そのものは弱いです。
経済規模が人口に対してかなり小さいと分かっています。
2018年の「平成28年度県民経済計算」を確認すると、奈良県の総生産は県全体で3兆4212億6500万円。
1人あたりの数字は252万2000円となっており、全国的に見てかなり低いです。
- 九州、沖縄、鳥取と同水準
- 関西では最下位
- 東日本のどの県よりも低い
出典:平成28年度県民経済計算
奈良県内でお金を使う人が少ない
奈良では大阪への消費流出が続いています。
2011年の「奈良県消費流出実態調査」では、消費額の23.4%(約4000億円)が県外に流出しているとされています。
「大阪で稼ぎ、大阪で使う」という図式が出来上がっているがために、奈良はお金持ちが多いにもかかわらず、経済規模が人口に対してかなり小さいのでしょう。
奈良は観光産業の規模もいまひとつ
奈良の大仏や春日大社など、全国的に有名な観光名所がある奈良。
しかし観光産業の規模もいまひとつです。
平成30年の「奈良県観光客動態調査報告書」を見てみると、奈良県の観光消費額は約1,786億円。
いっぽうお隣の京都府は、令和元年の「令和元年京都府観光入込客調査報告書」を確認すると約1兆3,025億円と、奈良県を大きく上回っています。
奈良と京都では人口に約2倍の差があるとはいえ、物足りない数字といえるでしょう。
しかし今後の伸びしろがあるということでもあります。
奈良のお金持ちに関するよくある質問
奈良のお金持ちに関する、よくある質問に回答します。
- 奈良のお金持ちはこれから減る?
- 奈良はお金持ちが多いから家賃水準も高いの?
Q.奈良のお金持ちはこれから減る?
奈良にお金持ちが多い理由のひとつは、景気がよかった時代に大阪のベッドタウンとして栄えたからだとご紹介してきました。
しかし好景気を経験した世代は、高齢化が進んでいます。
貯蓄文化や倹約の精神は残ったとしても、今後「奈良はお金持ちが多い場所」ではなくなっていく可能性はあるでしょう。
とはいえ、資産は受け継がれていくものです。
これから奈良のお金持ちは減ってしまう、とは言い切れません。
Q.奈良はお金持ちが多いから家賃水準も高いの?
お金持ちが多い奈良は、やはり家賃水準も高いのでしょうか。
結論から言うと、そんなことはありません。
奈良市内のファミリー向け物件の家賃はおおよそ6万円台程度と、やや安い水準です。
同じ奈良市内でも、交通の利便性によって家賃は大きく変動します。
バスがないと駅までアクセスできないようなエリアは、ファミリーで住める3DKの物件でも、4万円台から見つかりますよ。
奈良市内で家賃が10万円をオーバーするような物件は、どちらかというと少数派です。
7~8万円もあれば充分な広さと利便性を兼ね備えたファミリー向け物件が見つかるでしょう。
お金持ちではなくても、庶民がゆとりをもって生活できる街です。
「奈良はお金持ちが多い」は本当の話
以上のように、「奈良県・奈良市にお金持ちが多い」というのは噂ではなく、政府の統計データから分かる本当の話です。
奈良県民は平均貯蓄額が全国的に見て多く、世帯収入も上位となっています。
耐久消費財の保有率が高い、私立に通う子供が多いなどの特徴も、経済的に豊かだからこそと考えられるかもしれません。
学園前駅の百楽園エリアや、菖蒲池エリアなど、お金持ちの豪邸が多く建っている高級住宅街もあります。
東京都23区はある程度お金持ちでないと、広い一戸建てに住むのは難しいですが、奈良市は家賃水準もそれほど高くありません。
お金持ちが多いとはいえ、庶民でも暮らしやすい街といえるでしょう。