土地の所有者が亡くなり、相続することになったら、やるべきことがたくさんあります。
土地の相続手続きには法律上の期限はありませんが、相続手続きを先延ばしにするほど複雑になります。
また、相続税の申告と納税は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。土地の相続は、早めに手続きを終えましょう。
土地を相続する手続きの流れと必要な書類・費用の目安について分かりやすく解説します。
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土地の相続手続きには3パターンある
土地の相続手続きには3パターンあります。
- 遺産分割する場合
- 遺言がある場合
- 法定相続する場合
詳しく解説します。
①遺産分割する場合
遺産分割とは、相続人全員が協議に参加して、相続遺産の分け方を決める手続きのことです。
遺産分割は、遺言書がない・無効・分割方法が指定されていない場合に行われます。
遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があり、一人でも相続人が欠けた状態の分割協議は無効です。
相続人が希望する財産や相続の割合を主張ができ、他の相続人に反対されなければ希望が通ります。
認知症など意思能力が不十分な相続人には、成年後見人の選任が必要です。
また、相続人が未成年者の場合には特別代理人の選任が必要です。
分割協議で話がまとまらなければ、調停委員が仲介に入り分割協議をする、遺産分割調停を行います。
遺産分割調停が不成立となった場合、家庭裁判所が審判によって結論を示します(遺産分割審判)。
誰が相続するか決まったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押します。
②遺言がある場合
遺言書がある場合は、遺言書に従った遺産分割、相続をします。
遺言書が有効で分割方法が指定されているのであれば、遺産分割協議は必要ありません。
公証人役場で作成された「公正証書遺言」以外の遺言書(自筆証書遺言、秘密証書遺言)の場合は、相続手続きの前に家庭裁判所で検認手続きを行います。
なお、遺産分割協議後に遺言書が見つかれば、遺言書の内容が優先されます。
③法定相続する場合
法定相続とは、土地の権利を相続人の法定相続割合通りに分ける方法です。
法定相続人は、被相続人の配偶者と被相続人の血族です。
法定相続は遺産分割協議書が不要ですが、土地が共有名義となります。
土地が共有名義だと売却したいとき、共有者全員で手続きをする必要があり、一人でも反対する者がいれば売却できません。
土地を相続する際の手続き3STEP
土地を相続する際の手続きには大きく分けて3つのSTEPがあります。
- STEP①相続人同士で分配方法を話し合う
- STEP②相続登記に必要な書類・費用を準備する
- STEP③法務局に提出・登記申請をする
STEP①相続人同士で分配方法を話し合う
遺言書がないなどの場合は、相続人同士で話し合いをして分割方法を決めましょう。
遺言書があると遺言書の内容が優先されますが、以下の場合は遺言書と異なる遺産分割で良いとされています。
- 遺言書が無効である場合
- 受遺者(遺言による財産の受取人)と相続人全員が合意した場合
- 遺留分(最低限保証された相続分)より少ない場合
話し合いには相続人全員の参加が必須なので、まずは相続人全員を洗い出します。
相続人を調査するには、被相続人の出生から死亡まで戸籍謄本や除籍、改製原戸籍謄本を取得します。
相続人同士での話し合いの結果、法定相続すると決まれば次のステップに移ります。
遺産分割すると決まれば、分割協議を行い、誰がどのくらい相続するのか決めます。
STEP②相続登記に必要な書類・費用を準備する
相続人同士の相続の話し合いを終えたら、相続登記に必要な書類・費用を準備します。
必要書類は分配方法にもよりますが、用意する書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 印鑑証明書
- 固定資産税納税通知書
- 相続関係説明図
- 収入印紙
- 登録免許税印紙納付台紙
相続登記において、発生する費用は以下の通りです。
- 登録免許税(固定資産税評価額×税率0.4%)
- 必要書類の取得費用(200円~600円×必要枚数)
- 司法書士の依頼料(5~15万円)
相続登記の費用の負担は、誰でもできます。
相続人同士で分割して負担しても、誰か一人が負担してもかまいません。
後々トラブルを防ぐために、相続登記の費用の負担についてもあらかじめ話し合っておくと良いかもしれません。
STEP③法務局に提出・登記申請をする
相続が決まり、相続登記に必要な書類・費用を準備し終えたら、一定の方法でまとめて、対象の土地がある住所地管轄の法務局に提出・登記申請をします。
法務局への提出・登記申請は3パターンあります。
- 法務局窓口へ直接提出
- 郵送で提出
- オンラインにて申請、添付書面を郵送で提出
住所地管轄の法務局が遠い、仕事が休めないなどの場合は郵送またはオンラインでの提出が良いでしょう。
土地の相続登記をしていないとどうなる?
土地の相続登記をしていないと、以下のことが起こる可能性があります。
- 固定資産税納税通知書が、相続人代表者や実際の土地の管理者以外に届き、納税漏れの可能性がある
- 納税が遅れると延滞税がかかる
- 土地の所有者が不明確になり、売買が自由にできなくなる
- 時間の経過とともに新しい相続が発生、人間関係の複雑化により遺産分割協議が難航する
- 必要書類の入手が難しくなる
- 相続した土地を差し押さえられる可能性がある
以上のことから、トラブルを防ぐためにも土地の相続登記をしましょう。
また、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されます。
違反した場合は、10万円以下の違反金を徴収される場合があります。
相続登記をすると免税される場合がある
相続登記をすると登録免許税が免税になる場合があります。
免税措置には期限がありますので、早めに申請しましょう。
登録免許税が免税になる、以下2パターンについて解説します。
- 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合
- 価額が100万円以下の土地にかかわる場合
①相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合
平成30年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間、免税されます。
例えば、Aさんが亡くなり、Aさんの土地が妻のBさんに相続されました。
しかし相続未登記のまま妻のBさんが亡くなりました。
この土地は、次にAさんとBさんの息子であるCさんが相続します。
この場合の登録免許税の免税対象は、Aさん→Bさんの相続時の登録免許税です。
②価額が100万円以下の土地にかかわる場合
土地の相続の場合の登録免許税が免税される期間は、平成30年11月15日から令和7年(2025年)3月31日までです。
土地を共有する場合でも、持分が100万円以下であれば適用されます。
表題部所有者の相続人が所有権保存登記の場合の免税期間は、令和3年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までです。
登録免許税の免税を受けるには、免税の根拠となる法令の条項を申請書への記載が必要です。
相続登記の登録免許税の免税については「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と申請書に記載します。
土地相続の手続きに必要な書類
土地相続の手続きに必要な書類は以下の9つです。
- 登記申請書
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 印鑑証明書
- 固定資産税納税通知書
- 相続関係説明図
- 収入印紙
- 登録免許税印紙納付台紙
有効な遺言書がある場合は、遺産分割協議書の代わりに遺言書原本を提出します。
①登記申請書
登記申請書には、登記の目的、原因、権利者、義務者、土地の課税価格、登録免許税額、土地の所在地など不動産の表示を記載します。
登記申請書は、テンプレートを参考に自分たちで作成するか、専門家に作成してもらいます。
記載事項に誤りがあると、差し戻されて二度手間になるので、間違いがないように注意しましょう。
特に不動産の表示の記載を正確にするために、登記事項証明書を取得して確認します。
登記事項証明書の取得は、法務局の窓口(土地の住所地に関わらず全国の法務局)へ交付申請書を持参、または郵送で申請します。
現在では、Webからでも情報が取得できます。
②遺産分割協議書
遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産分割の話し合い(遺産分割協議)をして、誰が引き継ぐかなど決定事項をまとめた書類です。
有効な遺言書がある場合や法定相続の場合は、遺産分割協議書は必要ありません。
遺産分割協議書作成前には、以下3つの手順が必要です。
- 法定相続人を明らかにする
- 被相続人の財産を調べる
- 遺産分割協議をする
遺産分割協議書は、テンプレートを参考に自分たちで作成するか、専門家に作成してもらいます。
記載すべき内容は以下の通りです。
- タイトルに「遺産分割協議書」と明記
- 被相続人の情報(氏名、生年月日、死亡年月日、最終住所など。後々被相続人の特定に不明点がないように情報を記載)
- 相続人全員が遺産分割協議の内容に合意したことを示す文言
- 各相続人が受け取る相続財産の内容
- 相続人全員の署名、住所、実印の押印
さらに以下の2つを記載しておくとトラブルになりにくくなります。
- 「相続人全員で協議した」という文言
- 遺産分割協議書作成後に新たに相続財産が見つかった場合の取り扱い方
相続人が未成年の場合は、法定代理人を立てるので、代理人の実印の押印が必要です。
③戸籍謄本
戸籍謄本とは、個人の身分事項を証明する書類です。
土地相続の手続きに必要な戸籍謄本は、次の2点が必要です。
- 被相続人の戸籍
- 各相続人の戸籍
戸籍謄本は、本籍地のある役所の市民課で取得します。
本籍地が分からない方は、住民票を取得するときに本籍地入りの住民票を取得しましょう。
亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍は、役所の窓口で「相続登記をします」と言うと出生から死亡までの戸籍を全て出してくれます。
転籍しているなどの場合は複数の役所に申請が必要です。
本籍地より遠方に住んでいる場合は、郵送またはコンビニ交付機で取り寄せることができます。
郵送での取り寄せは、依頼から自宅に戸籍謄本が届くまで10日ほどかかります。
コンビニ交付機での取り寄せは、即日発行です。
ただし、コンビニ交付機での取り寄せには、本籍地がコンビニ交付機に対応していて、かつマイナンバーカードを持っていなければなりません。
④住民票
土地相続の手続きに必要な住民票は以下の通りです。
- 被相続人の住民票(亡くなられている場合は住民票の除票)
- 各相続人の住民票
住所地のある役所の市民課で取得できます。
⑤印鑑証明書
印鑑証明書は、遺産分割協議書に実印を押印しますが、それを証明するために必要です。
各相続人の印鑑証明書を添付します。
印鑑証明書は住所地の役所で取得できます。
印鑑登録が済んでいない方は、先に役所への登録が必要です。
⑥固定資産税納税通知書
固定資産税納税通知書とは、不動産を所有する人に対して課税される税金の納付額や支払期限などが記載されている書類です。
土地の所在地の役所の資産税課で取得できます。
⑦相続関係説明図
相続関係説明図とは、被相続人と相続人との関係が一覧となった家系図のことです。
相続関係説明図を提出すると「戸籍謄本・除籍謄本など証明書の原本」を法務局(登記所)から返却してもらえます。
相続関係説明図には、被相続人については以下を記載します。
【被相続人について】
- 被相続人であること
- 氏名
- 最終本籍
- 最終住所
- 生年月日
- 死亡年月日
相続人については以下を記載してください。
【相続人について】
- 氏名
- 被相続人との続柄
- 生年月日
相続関係説明図は、テンプレートを参考に自分たちで作成します。
⑧収入印紙
収入印紙とは、税金や手数料、その他収納金を徴収するために政府が発行する証票です。
登録免許税の支払いに収入印紙を購入します。
登録免許税は原則現金で納付し、交付された領収書を提出しますが、現在では収入印紙での納付がほとんどです。
収入印紙は、郵便局や法務局、金券ショップで購入できます。
コンビニでも取り扱っている場合があります。
購入した収入印紙は、登記申請書の余白に貼る、または別紙に貼ります。
この際、収入印紙に割印はしません。
⑨登録免許税印紙納付台紙
登録免許税印紙納付台紙とは、登録免許税を納付する際の収入印紙を貼り付ける台紙のことです。
法務局の窓口にて、無料で用紙をもらえます。
A4やB5の白いコピー用紙などでもかまいません。
登記申請書と登録免許税納付用台紙をホチキスで綴り、綴り目1か所に契印します。
土地相続の手続きに必要な費用
土地相続の手続きに必要な費用の目安を把握し、少しでも相続に関する不安を解消しましょう。
土地相続の手続きに発生する費用は、大きく分けて以下の3つです。
- 登録免許税
- 必要書類の取得費用
- 司法書士の依頼料
このうち、登録免許税と司法書士の依頼料は相続財産の価格によって変わります。
①登録免許税
登録免許税は、登記手続きの際に納める税金のことです。
登録免許税は、土地の価格(固定資産税評価額)× 税率0.4%(4/1,000)で計算します。
ただし、相続人以外の人が遺言によって、土地を取得した場合は税率が2%となります。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書や固定資産税評価証明書を取得して確認できます。
登録免許税は原則現金で納付しますが、収入印紙で納付するのがほとんどです。
領収証書(あらかじめ金融機関で現金で納付した場合)、または収入印紙を登記申請書に貼り付けて法務局に提出します。
②必要書類の取得費用
必要書類の取得費用は、相続人が1人の場合は約2,400円、相続人が1人増えるごとに約900円が加算されます。
必要書類のうち、取得に費用がかかるのは以下の通りです。
【必要書類】
- 登記事項証明書:480~600円
- 戸籍謄本:300円(郵送取り寄せの場合は往復の運賃も必要)
- 住民票:200~300円
- 印鑑証明書:300円
- 固定資産税納税通知書:300円
自治体、書類の申請方法によっても異なります。
マイナンバーカードを利用した申請方法だと少しお得です。
③司法書士の依頼料
司法書士の依頼料は5万円~15万円です。
司法書士によって、相続総額や業務が複雑になると追加の費用が必要です。
司法書士は、戸籍収集や書類作成、登記などの相続手続き業務が得意ですので、相続人同士で争いがない場合に依頼すると良いでしょう。
司法書士の依頼料を含めた相続登記に関する費用は、相続人で分割または相続人の誰かが代表して支払います。
相続人同士で分割する場合、他の相続人と話し合ってから司法書士に依頼しましょう。
まとめ~土地相続の流れを把握してスムーズに手続きしよう~
ここまで土地相続の流れや必要書類・費用について解説しました。
土地相続の流れは大きく分けて3つのステップがあります。
- STEP①相続人同士で分配方法を話し合う
- STEP②相続登記に必要な書類・費用を準備する
- STEP③法務局に提出・登記申請をする
土地の相続手続きには法律上の期限はありませんが、相続税申告と納税には期限があります。
さらに令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されますので、早めの手続きがオススメです。
土地相続の流れを把握して、スムーズに手続きしましょう。